Naeem Mohaiemen “ United Red Army ”
【日時】:2019年12月20日(金)13:20-14:40
【場所】:倉敷芸術科学大学
EEE(川上研究室)では、イギリスおよびバングラディッシュのアーティスト、ナイーム•モハイエメンの「United Red Army」のスクリーニングを開催いたします。本作は、モハイエメンが歴史的なアーカイブ資料を調査しながら、彼自身が 「超左翼」と呼ぶ物語に基づいて制作する作品シリーズ「The Young Man Was」のひとつであり、字幕付きのオーディオ・レコーディング、テレビイメージ、そして歴史資料の上にモハイエメンの個人的な物語を重ねたナレーションで構成されています。
日本赤軍はマルクス・レーニン主義を信奉する新左翼系の過激派武装闘争組織です。1971年,共産主義者同盟赤軍派の重信房子を中心とする一派が「国際根拠地建設」を掲げ,レバノンの首都ベイルートに赴いてアラブ赤軍を結成以降,パレスチナ解放人民戦線 PFLPとの共闘を通じて中東に活動拠点を築き、1974年に日本赤軍を名のりました。本作で取り上げる1977年に起きた日本赤軍によるバングラディッシュのダッカ日航機ハイジャック事件は、日本政府による超法規的措置による捕虜交換で幕を閉じましたが、この間、バングラディッシュのマオイスト左派の兵士の大隊が、ジアウル・ラフマンの軍事政権に対するクーデターを企て、空港を襲撃しました。飛行機に乗り合わせた日本人観光客が偶然撮影した、この国内の暴力と弾圧を押し進めることとなった歴史的瞬間は、本作にも織り込まれています。モハイメンは「この舞台裏には、ハイジャックが行われている間にバングラデシュ空軍内で試みられた軍事クーデターの秘密の歴史がある。日本人はハイジャックの「平和的終結」しか知らないが、バングラデシュ側では甚大な二次被害が発生していた」と語ります。
急進的政治運動が交差する特定の領域に介入し、その目撃者であることの意味を問い続けるモハイエメンは、出身地であるバングラデシュの歴史に焦点を当てつつ、歴史の側面に新たな注釈を加えます。革命というユートピア的志向の高揚とはうらはらに、イデオロギーの不協和音と共に生じた二つの物語は、我々に歴史の複層性を示唆し新たな見解を開示します。